基本情報技術者過去問題 平成27年春期 午後問8

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問8 データ構造及びアルゴリズム

次のプログラムの説明及びプログラムを読んで,設問1~3に答えよ。

 与えられたn個のデータの中からk番目に小さい値を選択する方法として,クイックソートを応用したアルゴリズムを考える。クイックソートとは,n個のデータをある基準値以下の値のグループと基準値以上の値のグループに分割し(基準値はどちらのグループに入れても構わない),更にそれぞれのグループで基準値を選んで二つのグループに分割するという処理を繰り返してデータを整列するアルゴリズムである。クイックソートを応用してk番目に小さい値を選択するアルゴリズムでは,データを二つのグループに分割した時点で,求める値はどちらのグループに含まれるかが確定するので,そのグループだけに,更に分割する処理を繰り返し適用する。グループの分割ができなくなった時点で,k番目に小さい値が選択されている。

〔プログラムの説明〕
 n個の数値が格納されている配列xと値kを与えて,k番目に小さい値を返す関数 Select である。ここで,配列xの要素番号は1から始まる。また,配列xの大きさは,配列に格納される数値の個数分だけ確保されているものとする。Select の処理の流れを次に示す。
  • 行番号3~4
     k番目に小さい値を選択するために走査する範囲(以下,走査範囲という)の左端を Top,右端を Last とし,まず配列全体を走査範囲とする。
  • 行番号5~32
    1. 走査範囲に含まれる要素の数が1以下になるまで,②,③を繰り返す。
    2. 基準値 Pivot を選び,走査範囲内の値で基準値以下のものを左に,基準値以上のものを右に集める(行番号6~24)。
    3. 走査範囲が基準値以下の値から成るグループと基準値以上の値から成るグループに分割されるので,k番目に小さい値が含まれるグループを新たな走査範囲とする(行番号25~30)。
    4. 繰返しが終了したときに,要素 x[k] の値がk番目に小さい値として,選択される。
 Select の引数と返却値の仕様は次のとおりである。

設問1

関数 Select の追跡に関する次の記述中の に入れる正しい答えを,解答群の中から選べ。

 関数 Select の引数で与えられた配列xの要素番号1~7の内容が3,5,6,4,7,2,1であり,nが7,kが3のとき,配列xの走査範囲の左端 Top と右端 Last の値は次のとおりに変化する。
  • Top と Last の初期値は,それぞれ1と7である。
  • Top<Last が成り立つ間,次に示す(1)選択処理1回目の①~③,(2)選択処理2回目の①~③,…と実行する。
  • 選択処理1回目
    1. 配列xの走査範囲を二つの部分に分ける基準値 Pivot に配列xの3番目の要素x[3]の値 6 を設定する。次に,iに Top の値 1,jに Last の値 7 を設定する。
    2. 配列xの Top から Last までの走査範囲内にある数値を,6以下の数値のグループと6以上の数値のグループの二つに分ける処理を行う。その結果,配列xの内容は次のとおりになる。
       3,5,1,4,2,7,6
    3. aを設定して選択処理の2回目に進む。
  • 選択処理2回目
    1. 基準値 Pivot に x[3] の値 1 を設定する。
    2. 配列xの Top から Last までの走査範囲内にある数値を,1以下の数値のグループと1以上の数値のグループの二つに分ける処理を行う。その結果,配列xの内容は次のとおりになる。
       1,5,3,4,2,7,6
    3. bを設定して選択処理の3回目に進む。
  • 選択処理3回目
       ⋮
 この選択処理を繰り返して,Top<Last でなくなったときに処理を終了する。このとき,関数の返却値 x[k] には与えられた数値の中からk番目に小さい値が選択されている。
a,b に関する解答群
  • Topに値1,Lastに値5
  • Topに値1,Lastに値6
  • Topに値2,Lastに値5
  • Topに値2,Lastに値6
  • Topに値3,Lastに値5
  • Topに値3,Lastに値6

解答選択欄

  • a:
  • b:

解答

  • a=
  • b=

解説

プログラムを見ると、Top=1、Last=nを初期値として、TopがLastより小さい間、以下の処理を繰り返しています。基本的な流れを確認しておきましょう。
10~12行目
x[i] が Pivot 以上になるまで i を進めます。
13~15行目
x[j] が Pivot 以下になるまで j を戻します。
16~18行目
i が j 以上ならばループを抜け、25~30行目のTopとLastを再設定する処理に移ります。
19~23行目
x[i] と x[j] を交換します。その後、iに1を足し、jから1を引きます。
15~30行目
iがk以下ならば探索範囲の先頭を j+1 に変更し、jがk以上ならば探索範囲の末尾を i-1 に変更します。
aについて〕
配列xの要素は[3,5,6,4,7,2,1]で、k=3なので、1回目の選択処理では Pivot の値が x[3]=6 になります。
  1. iが1から3まで進み、jは7のままです。
    3,5,6(i),4,7,2,1(j)
  2. x[i] と x[j] を交換(赤字部分)し、i+1、j-1を行うと、以下のようになります。
    3,5,1,4(i),7,2(j),6
  3. iが7の位置まで進み、jは6の位置のままです。
    3,5,1,4,7(i),2(j),6
  4. x[i] と x[j] を交換し、i+1、j-1を行うと、以下のようになります。
    3,5,1,4,2(j),7(i),6
  5. x[i]≧6、x[j]≦6なので、iとjはどちらも移動しません。
  6. i≧j となったのでbreak文でループを抜けます。この時点で、i=6、j=5です。
  7. i>3 なのでTopは1のまま、j≧3 なのでLastには i-1、すなわち「6-1=5」が格納されます。
したがって、選択処理1回目の最後では、Topに1、Lastに5を設定して次のループに進みます。

a=ア:Topに値1,Lastに値5

bについて〕
配列xの要素は[3,5,1,4,2,7,6]なので、2回目の選択処理では Pivot の値が x[3]=1 になります。
  1. iは1のまま、jは5から3まで戻ります。
    3(i),5,1(j),4,2,7,6
  2. x[i] と x[j] を交換し、i+1、j-1を行うと、以下のようになります。
    1,5(i,j),3,4,2,7,6
  3. iは2のまま、jは1まで戻ります。
    1(j),5(i),3,4,2,7,6
  4. i≧j となったのでbreak文でループを抜けます。この時点で、i=2、j=1です。
  5. i≦3 なのでTopには j+1、すなわち「1+1=2」が格納されます。j<3 なのでLastは5のままです。
したがって、選択処理2回目の最後では、Topに2、Lastに5を設定して次のループに進みます。

b=ウ:Topに値2,Lastに値5

設問2

次の記述中の に入れる正しい答えを,解答群の中から選べ。

 引数で与えられた配列xの要素番号1~7の内容が1,3,2,4,2,2,2であり,nが 7,kが 3 のとき,選択処理が終了するまでにプログラム中のαの部分はc回実行され,γの部分はd回実行される。
c,d に関する解答群
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • 6

解答選択欄

  • c:
  • d:

解答

  • c=
  • d=

解説

cdについて〕
配列xの要素は[1,3,2,4,2,2,2]で、k=3なので、1回目の選択処理では Pivot の値が x[3]=2 になります。設問1と同じように処理をトレースしていきます。
  1. Topに1を、Lastに7を設定します(α)。
  2. iが1から2まで進み、jは7のままです。
    1,3(i),2,4,2,2,2(j)
  3. x[i] と x[j] を交換し、i+1、j-1を行うと、以下のようになります。
    1,2,2(i),4,2,2(j),3
  4. iとjともに変化せずそのままの位置です。
    1,2,2(i),4,2,2(j),3
  5. x[i] と x[j] を交換し、i+1、j-1を行うと、以下のようになります。
    1,2,2,4(i),2(j),2,3
  6. iとjともに変化せずそのままの位置です。
    1,2,2,4(i),2(j),2,3
  7. x[i] と x[j] を交換し、i+1、j-1を行うと、以下のようになります。
    1,2,2,2(j),4(i),2,3
  8. x[i]≧2、x[j]≦2なので、iとjともに移動せずそのままの位置です。
  9. i≧j となったのでbreak文でループを抜けます。この時点で、i=5、j=4です。
  10. i>3 なのでTopは1のまま、j≧3 なのでLastには i-1、すなわち「5-1=4」が格納されます。
選択処理2回目に入ります。Pivot は1回目と同じ2です。
  1. Topに1を、Lastに4を設定します(α)。
  2. iが1から2まで進み、jは4のままです。
    1,2(i),2,2(j),4,2,3
  3. x[i] と x[j] を交換し、i+1、j-1を行うと、以下のようになります。
    1,2,2(i,j),2,4,2,3
  4. x[i]≧2、x[j]≦2なので、iとjともに移動せずそのままの位置です。
  5. i≧jとなったのでbreak文でループを抜けます。この時点で、i=3、j=3です。
  6. i≦3 なのでTopなのでTopには j+1、すなわち「3+1=4」が格納されます。j≧3なのでLastには i-1、すなわち「3-1=2」が格納されます。
Top<Lastが偽となるので選択処理は終了し、関数の返却値として x[3]の値である2が返されます。

αの処理は選択処理を行った回数だけ実行されるので2回、γの処理は配列要素の交換を行った回数だけ実行されるので4回となります。

c=イ:2
 d=エ:4

設問3

次の記述中の に入れる正しい答えを,解答群の中から選べ。

 プログラム中のβの行 x[i]<Pivot を誤って x[i]≦Pivot とした。この場合,引数で与えられた配列xの要素番号1~6の内容が1,1,1,1,1,1であり,nが 6,kが 3 のときe。また,引数で与えられた配列xの要素番号1~6の内容が1,3,2,4,2,2であり,n が6,k が3のとき,f
e,f に関する解答群
  • Lastに値 0 が設定される
  • Pivotに値 0 が設定される
  • Topに値 0 が設定される
  • 処理が終了しない
  • 配列の範囲を越えて参照する

解答選択欄

  • e:
  • f:

解答

  • e=
  • f=

解説

eについて〕
x[i]≦Pivot とすると配列要素の値がPivotを超えるまで i が進むことになります。配列要素が[1,1,1,1,1,1]、Pivotが1の場合、iは配列要素の末尾(n)を越えて増加し、定義外の要素である x[7] を参照することになります。これにより参照エラーを起こします。

e=オ:配列の範囲を越えて参照する

fについて〕
配列要素が[1,3,2,4,2,2]の場合、次のように処理が進みます。

選択処理1回目の Pivot は x[2]=2 です。
  1. Topに1を、Lastに6を設定します。
  2. iが1から2の位置まで進み、jは6のままです。
    1,3(i),2,4,2,2(j)
  3. x[i] と x[j] を交換(赤字部分)し、i+1、j-1を行うと、以下のようになります。
    1,2,2(i),4,2(j),3
  4. iが4の位置まで進み、jは5のままです。
    1,2,2,4(i),2(j),3
  5. x[i] と x[j] を交換(赤字部分)し、i+1、j-1を行うと、以下のようになります。
    1,2,2,2(j),4(i),3
  6. x[i]≧2、x[j]≦2なので、iとjともに移動せずそのままの位置です。
  7. i≧j となったのでbreak文でループを抜けます。この時点で、i=5、j=4です。
  8. i>3 なのでTopは1のまま、j≧3なのでLastには i-1、すなわち「5-1=4」が格納されます。
選択処理の2回目に入ります。Pivot は2です。
  1. Topに1を、Lastに4を設定します。
  2. iが1から5の位置まで進み、jは4のままです。
    1,2,2,2(j),4(i),3
  3. x[i]≧2、x[j]≦2なので、iとjともに移動せずそのままの位置です。
  4. i≧j となったのでbreak文でループを抜けます。この時点で、i=5、j=4です。
  5. i>3 なのでTopは1のまま、j≧3 なのでLastには i-1、すなわち「5-1=4」が格納されます。
選択処理の3回目に移りますが、TopとLastの値、配列要素が選択処理2回目開始時点と同一なので以後同じ処理が永久に続きます。つまり、処理が終了しません。

f=エ:処理が終了しない

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